困った自慢
私の夫は世間にはあまり知られていないが、ハンサムである。正確に言うと本人しか知らないハンサムである。
その夫に困った癖がある。同じ映画を繰り返し見ては、同じところで泣いているのである。
「その映画、前も見てたじゃない」と言うと「そうか?」と言う。さらに追及すると「忘れるから何度も感動できていいんだ」という。
ヒートテックを着始めるこの時期になると「ヒートテックを着ると不思議なんだ。俺はひんやりするんだよ。」
これも寒くなってから10回は聞いている。「もう、10回は聞いた」というと、
「そんなものじゃないんだよ。これをいろいろな人に言ってるから120回ぐらいは
言ってるはずだ。」と言う。
この自己肯定感は、素晴らしいと思う。しかし、これで、若いころから、長谷川式記銘力検査にもひっかからないのだから、若年性のぼけでもないのだろう。
本当に治療が必要になった時がわからないのが、心配だ。
この原稿を見せると「だから、俺はすごいんだ。」と言う。心配だ。