こころの中の冒険旅行
臨床を長年やっていると、空気で、肌で相手の感情が動いているのを感じる。それは、哀しみであったり、怒りであったり、憎しみであったり、深い傷つきであったり、寂しさである。
時折、相談者が圧倒されている感情を表現してもらっていると、 どす黒い濁流のようなものが渦巻いていたり、立ってもいられない台風のような光景が見えたり、砂漠のようなところに一人っきりでいる情景が見えてくることがある。
さながら冒険旅行の一番困難な場面に臨むようである。
その世界を共に味わっていると、相談者の言葉と見えている景色を手がかりに 伝えたいことがわいてくる。
それは、共感と受容を表す言葉なのだろうが、一言一言伝えるごとにその世界が変化していく。渦巻きは消失したり、暗雲たちこめた雲は雨を降らせ、少しずつ青空をのぞかせる、乾いた土は潤い、緑が生えてきたりする。
冒険旅行を終えて、現実に戻った時、相談者の苦しさは減少している。
これは視覚優位な人に合う方法なのかもしれない。
現実の人のこころの中の冒険旅行は本当に奥深い。